あなたの周りもジョブズ・ファンがいるかもしれません。しかし、プチ・ジョブズとジョブズ・ファンとはちょっと違います。
プチ・ジョブズの多くが、昨年ジョブズ氏の死後すぐに発刊された公認伝記「スティーブ・ジョブス」を読んでからのジョブズ信者で伝記を経営の参考書(バイブル)にしています。
これについてWSJが「ジョブズ氏の伝記、経営者のバイブルに」で、ジョブズになりたがる迷惑な経営者について書いています。
ジョブズ伝記を読んだ多くの人が「自分もジョブズになれるのでは?」とか「ジョブズのやり方を真似たい」「ジョブズのやり方を取り入れると会社が活性化するのではないか」のように考えがちです。
それだけ、ジョブズ氏が偉大で、伝記の内容が素晴らしかったということなのですが、能力に欠ける経営者や企業幹部がジョブズ氏と同じようなことをしようとしても、表面的なことだけで終わって、部下を疲弊させるだけになりがちです。
Appleの経営はトップダウンですが、そのトップダウンを支える超優秀なスタッフ集団です。それらのスタッフを束ね、必要あらば外部から持ってくるのが経営者の役割です。
ジョブズ氏の強力な舵取りは、周りを固める優秀なスタッフがあるからこそ成り立っている側面があります。ティムクック氏しかり、ジョナサン・アイブ氏しかり、フィル・シラー氏しかり、スコット・フォーストール氏しかりで、皆超優秀なスタッフです。
人材以外に重要なのが、滅多なことではぶれない強力なポリシーです。Appleの製品が成功したのは、ジョブズ氏が「テクノロジーと教養・アートとの交差点にある製品を作り、人々の生活を変えたい」との明確なポリシ-を持ち、それをを実現するために一貫して行動したからです。
ジョブズ氏はそのためには、手段を選びませんでした。1997年にAppleに復帰したときにはジョブズを復帰させたアメリオ氏を追放して、自らが権力を握りました。また、AndroidをリリースしたGoogleのエリック・シュミット氏を執拗に憎むなど、人間的にバランスがとれているとは言い難い面があります。
ジョブズ氏はご存知のようにiPhoneやiPadの開発を強い意思をもって推進しました。あれだけ素晴らしい製品ができたのは、ジョブズ氏の妥協しない執拗にこだわる性格があったからです。
しかし、一般社会にのプチ・ジョブズは、ジョブズ氏にあこがれながらも、それだけのポリシー、強いこだわり、素晴らしいスタッフを集めてくる能力(交渉力)を持っていません。それどこころか、トップダウンで部下に指示しながら、失敗すると部下の責任にしたりするのではないでしょうか。
プチ・ジョブズは、ジョブズ氏のように修羅場をくぐっていませんし、成功や失敗からから多くの教訓を学んでいません。ジョブズ氏は人生を振り返り、自らが創業したAppleをクビになったことが、結果的に自分にとってよかったと述べています。
大きな成功と大きな失敗があってこそ、それを超えていける本物のジョブズ氏が生まれたのです。
最後にジョブズ氏も読んだであろう禅の「信心銘」の一節をお送りします。
話せば話すほど、考えれば考えるほど
ますます真理から遠ざかるばかり
話すことも考えることもやめないさい
そうすれば知り得ないものはなにもない
なんで〆のところで間違えるかなぁ…w
投稿情報: にこぬこ | 2012/04/05 02:07